2007/09/02(日)
「今日は買い場。日本製鋼所、田辺製薬、日本電気硝子を二千株ずつ買いましたよ」。二十九日午後、東京・日本橋の証券会社に立ち寄った小林衛さん(73)は自信ありげに笑った。この日、投じた金額は約九百万円。投資歴五十年の小林さんにとって急落は押し目買いの好機だ。日経平均が急落した十七日も、三菱商事など好業績銘柄を計一万五千株購入。週明けの戻り局面で売却し、百五十万円を稼いだ。
だが、小林さんのように立ち回った人は少数派だ。「サブプライムショック」が引き金となった世界同時株安は、着実に市場での存在感を増してきた個人投資家の大多数に苦い教訓を残した。
「旅行中に値上がり益を百万円ほど失った」。川崎市の主婦、山下千枝さん(仮名、50)は十八日までの十日間、アジアなど国内外を旅行していた。その間、日経平均株価は一七五六円も急落。外食、電力株など配当重視で保有していた銘柄が軒並み値下がりした。
今回の株価急落は、二〇〇六年一月の「ライブドア・ショック」とは異質なものだった。十七日は東京証券取引所第一部の九割超が下落。ネット株の値上がり益を狙う短期売買から大型株投資に移っていた個人投資家も、トヨタ自動車が七%安、任天堂が九%安となる局面では逃げ場がない。
「熟慮した末に主力株を買っていた多くの個人投資家が痛手を被った」(清水洋介・マネックス証券投資情報部長)。この日、ネット証券大手五社で発生した追い証(追加担保の差し入れ)は一万件を上回り、過去最高水準となった。
「これは危険。ついていけない」。世界の株式相場を巻き込んだ未体験の急落は、株式投資を始めて日が浅い「初心者」だけでなく、数々の相場の荒波をくぐり抜け、腕に自信があったはずの「コジン・トレーダー」たちをも凍り付かせた。都内在住で株価指数先物取引を手がける安倍哲之助さん(仮名)は十七日の午後二時過ぎ、それまで繰り返していた小口の売買をストップ。持ち高を整理して静観に徹した。下げの勢いが激しすぎたためだ。
同じころ、〇五年のジェイコム株の誤発注事件で二十億円を稼いだK(BNF)さん(29)の心も揺れていた。商社、鉄鋼、自動車・・・朝方から好業績銘柄も割安株も売りたたかれる値動きに違和感を覚え、すぐに保有株を売却。利益を確定して損失を最小限に抑えた。数十億円を一瞬で動かすKさんも、大引け前の「株価崩落」を目の当たりにしてギリギリまで迷った。買いに動くか、静観するか。〇一―〇二年の下げ相場でも見たことがない下落。結局、買い向かわずに大引けを迎えた。
その六時間後、米連邦準備理事会(FRB)は公定歩合引き下げを発表。週明け二十日の日経平均は急反発した。Kさんは「買っていたら利益は五億円。時間と勇気が足りなかった。今年最大のミス」と悔しさをにじませる。
一九九八年のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)危機、〇一年の米同時テロ――。過去の金融危機と比べると個人の売買代金シェアは今回の調整時(二一%)が最も高い。ライブドア・ショックが起きた〇六年一月(四一%)よりは低下したが、個人の存在感が高まっていることは間違いない。
サブプライムローンのリスクは証券化商品を通じて世界中に拡散し、その調整が株式や債券のほか、為替、商品のマーケットまでも震撼(しんかん)させた。そのリスクは今回の円高・株安を通じ、資産運用に動き始めた個人の「家計」も直撃した。モルガン・スタンレー証券の神山直樹・日本株ストラテジストは、「株式から債券に乗り換えたり、ポートフォリオの変更は投資のタイミングを分散することが重要だ」と指摘している。
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(記事要約) 米国ではこのところサブプライム・ローンという言葉を耳にしない日が...
2007/09/05(水) 03:21:07 | 専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク【MediaSabor メディアサボール 】







